FC2ブログ

 *
心地よい風がそよぐ4月。
まっさらの新鮮な気持ちで地上に降り立つ。
コツコツと響くパンプスの音。
軽快なリズムは気分を軽くする。

頭上はるか上にそびえ立つ東京都内の道明寺グループ自社ビルの前。
「ヨシ」と一つ自分に気合を送った。
行きかう人々が深々と頭を下げて足早にビルの中へと消えていった。
見られていたかと確かめる様に周りをきょろきょろと泳ぐ視線。
これでも見られることへの免疫は少しずつ上昇してると思いたいがこんな場合は道明寺が側にいないと落ち着けなくなる。

視線の合った知らない男の人が慌てた様に視線を反らして頭を下げた。
つられる様に頭を下げる。
頭を上げたときには男の人の姿はコツンと消えていた。

目立つから一人で先に行くと道明寺を待たずに車に乗り込んだ。
ふてくされているに違いない顔を思い浮かべて打ち消すつもりで目を閉じた。
これでは、あいつの機嫌をそこなってまで一人で来る必要はなかったみたいだ。
華やかなあいつがいなくても私の顔はばれているんだと気が付いた。

半年前のバカみたいな騒ぎ。
社員食堂で食事をする代表。
会社中に飛び交ったメール。
暇を見ては顔を出した10階の弁護士事務所。
最上階より10階で代表を見かける可能性が高いとささやかれた噂。
道明寺見たさの女子社員のスポットになってしまってた。

沈着冷静。
クール。
切れ者。
近寄りがたいというイメージはやや崩壊気味。

「代表が機嫌が悪ければ奥様の陰に隠れろ」
会社のお偉方の合言葉になってるらしい。

「ねこにまたたび、代表につくしさま、ということらしいです」
「私も御利益をいただきました」
そうにっこりほほ笑んだのは西田さん。
初めて西田さんが笑ったのを見た瞬間だった。

結婚してイメージが変わっても道明寺の人気があるのは変わりがない。
相変わらず「キャー」「ワァー」の感嘆符付きの黄色い声はどこからか聞こえてる。

「お前俺がモテ過ぎて心配じゃねぇ」
「なんで?」
「浮気とか?」
「浮気するの?」
「しねっよ。するわけねぇだろう」
焦って打ち消すのはいつも道明寺の方。
高校時代から免疫がある私が嫉妬心を見せないことに道明寺は不満そうだ。
道明寺が私しか見てないことを知ってるから安心できてるだけのことなのに。
くすぐったい気持ちのまま目の前に止まったエレベーターに乗り込んだ。





3か月ぶりの弁護士事務所。
少し緊張気味に入り口のドアを開ける。

「つくしちゃん」
一番に駆けよって来てくれたのは玲子さん。
ガシッとしっかり両手を握って握手する。

「よッ」
軽めの声を上げたのは私の指導係の甲斐さん。

「お久しぶりです。今日からまたよろしくお願いします」
私の周りを囲こむ真中で深々と頭を下げる。
古巣に帰ってきたとホッカリさせる顔が並んだ。

「これからもよろしくね」
貫禄の中にやさしいさがにじむ岬所長。
本当に頼りになる。
道明寺ホールディグス最上階に君臨する支配者を「司クン」と呼んであしらえるのは唯一無二の存在だと私は一目置いている。
ここで働けなかったら私には働く居場所はなかったかもしれない。
道明寺家の若奥様という肩書きは私の行動を束縛するものにしかならなかったはずだろうから。
この肩書きに慣れるにはあとどのくらいの時間を要するのだろうか。
見当もつかない。

「さぁ、これからはバリバリに働いてもらわなくっちゃな」
屈たくなくポンと私の肩に甲斐さんが片手を置く。

「あっ、そんなに気軽につくしちゃんに触れたら代表が飛んでくるわよ」
「それはないですよ」
玲子さんの言葉を真っ先に慌てて否定した。

「一概に冗談じゃないからな」
「代表には俺のデスクがつくしちゃんの隣というだけで睨まれてる感じだもんなぁ」
「分かってるんだ?」
玲子さん半分おどけ気味だ。

「それは誰でもわかるでしょう」
「なッ」
甲斐さんは視線を私に向けて答えを私に振ってきた。

「知りませんよ・・・」
それだけって言って口ごもる。

「お手柔らかにって言っといてくれ」
甲斐さんに浮かぶ軽薄そうな笑い。

「からかわないでください」
言いながら頬が熱くなる。

「もう、相変わらずつくしちゃん可愛いんだから」
玲子さんに横から抱きつかれて少しよろけながら何とか平衡を保つ。

「玲子さん、そっちの方が触りすぎなんじゃないですか?」
「男じゃないから大丈夫よ」
「いや、玲子さんは男より男らしいとこあるから」
「プッー」
甲斐さんの言葉に思わず声が噴き出る。

「それくらいで仕事に戻って」
場の雰囲気が一瞬で変わる岬所長の一声。
私の弁護士としての1日目が今ここから始まった。


新しいお話です。
Fその後「第1話 百万回のキスをしよう」の流れを簡単に取り入れながらの説明的さわりのUPをしました。
この後は幸せまっしぐらのお話に向かって進む予定です。
何事もなく進みますように。合掌


拍手コメント返礼
mimi様
このお話は妊娠発覚までにあるとは思いますがノッたらどこまで行くかは分かりません。

TOMOKO様
初コメありがとうございます。お付き合いよろしくお願いします。

匿名様
更新が早いのだけが取り柄みたいなもので(^_^;)
これからもよろしくお願いします。

ゆりり様
お疲れ様です。そしてありがとうございます。
最初から読んでもらってるんですね。
作者冥利に尽きます。
今半分と言うところでしょうか?
更新に追いつけるのももうすぐですよ♪
スポンサーサイト
 *

「ご一緒ではなかったのですね」
そう言いながらスケジュールのファイルを表情も変えずに俺の前に差し出す剛腕秘書。

「一緒は嫌なんだと」
「それは困ったことだ」
ため息交じりの言葉の中に苦笑が浮かぶ西田。
西田が困ることあるのか?
俺とつくしが一緒に出社しなくても別に問題ないだろう。
スケジュールを確認しながら眉を寄せる。

相変わらず1秒も無駄のない時間の並び。
今日の予定は夜7時の会食が最終。
夜もゆっくりできそうもない。

「会社にいるのは午前中の1時間だけか?」
これじゃ、あいつに会えるのは朝しかなかった様な今日の予定。

「久々の日本ですから」
前日までの休暇は差し上げましたよねと無言の凄み。
ロスじゃまともに二人で過ごせなかった休暇。
俺にとっての楽しい休暇は夢へと消えていた。
そんな言い訳が西田に通じるはずはない。
俺の機嫌も右に傾く。
困ったことだと西田がつぶやいたのはこのことか察しが付いた。
会社までの車の時間を損したようだ。

まあ・・・
会えないわけじゃないからいいけど。
別居することも今からあるはずないし、ようやく安心してこれから一緒の生活が送れるはずだ。

落ち着いて過ごすあいつのと新婚生活。
つくしの待つ部屋に帰る俺。
一人さびしくベットのシーツの冷たさを感じることもない。
どうせ仕事中は会えねえだろうしな。

「さっさと仕事を終わらせるぞ」
気分を切り替えるのうまくなってねぇか?俺。

「なぁ、このスケジュールの調子はいつまで続く?」
「しばらくは」
澄ました顔は当たり前でしょうと言いたげ見える。

「つくし様も仕事に慣れるまでは大変でしょうから、代表がお忙しいぐらいの方が邪魔にはならなくていいでしょう」
「どうして、俺が邪魔になるんだ」
「コホン」と西田が咳払いをしてスーツの内ポケットから取り出す一つの黒革の手帳。
「会社内の徘徊で女子社員が仕事にならないとの苦情が数十件。
社員食堂へ会食をキャンセルして行ったのが3回。
スケジュールの調整をさせられたのは数知れず。
用もないのに法律事務所の方に時間があるたびに行ってたのは・・・」
「もういい」
まだまだ並びたてられそうで西田の言葉を区切る。

「そこまではもうしない」
それでなくても帰るたびにつくしに文句を言われ続けた研修期間。

「そこまではと言うとどこまではやるつもりですか?」
どこまでって・・・
本音を言えばそこまで考えてはない。
約束しないと納得しそうもない気構えを西田は見せる。

「必要以外の所をうろつかなければいいんだろ」
西田を早く追い払いたい気分が湧き上がる。
こんな時のこいつは苦手だ。

「出来れば私の仕事を増やさない程度でお願いします」
楽しげに聞こえる西田の声。
ここまでくれば自分の意思は西田に握られた様に感じてしまう。
至近距離で見つめてくる西田を強い意志で睨みつける。

「仕事すればいいんだろうが」
「ご尽力をお願いいたします」
やっと総務室から西田を追い出した。

デスクの上に投げ落としたファイルが小さくパンと軽い音を立てた。
まるで気が抜けたみたいな音。
「邪魔しなきゃいいんだろう・・・」
呟く様に漏れる声。
「邪魔しなきゃな」
もう一度声が漏れた。


拍手コメント返礼
b-moka様
邪魔しないつもりの邪魔なこと!
みなさんの興味はそこに集中しているようで(^_^;)
インフルエンザもはやっているようでお互いに気を付けて頑張りましょう。

 *

「メールが来たよ」
携帯から聞こえるキティちゃんの声。
この設定は西田さん。
柄じゃねぇーーーといいつつ道明寺にはうけている。
道明寺がキティちゃんを知ってる方が意外だったけど。
ちなみに道明寺からの着信は相変わらずスターウォーズのテーマだ。

『今日は会食の予定がありますので帰りは22時をすぎのご帰宅予定です。
しばらくは仕事が立て込んでいますのでつくし様もご自分の仕事に集中できると思います。
早くお仕事に慣れることに期待を込めて』
そして西田のサインが最後を締めくくる。

喜んでいいのだろか?
私の為に道明寺の仕事を増やしたと言ってるみたいにも読めるメール。
西田さんが私のどこに期待してるのか・・・。
それはやっぱり『猫にまたたび』的なものなのだろう。
メールを読んで手の中に握りこむ携帯。
無意識にため息が漏れた。

「メール誰から?落ち込んでるみたいだけど?」
目ざとく握りしめた携帯に視線を注ぐ玲子さん。
メールの内容が見えるはずないのになぜか手のひらに力が入った。
落ち込むのが道明寺の帰りが遅くて会えない淋しさじゃなく、私といる時間を道明寺がどうかかわってくるのか、
それが不安だからだ。
束縛気味になるのは目に見えている。

「帰りが遅いって西田さんからのメールで・・・」
西田さんイコール道明寺の秘書ということは誰でも知っている。

「秘書ってそこまでしてくれるんだ」
「西田さん、私にも気を使ってくれるみたいで」
道明寺を機嫌よく仕事に集中させるためには必要な事の様でなんてわざわざ付け加える必要はない。
言わなくても玲子さんはきっと気が付いてると思う。
当たり前!
という様に悪戯ぽく表情が動いた。

「それじゃ、少しくらいつくしちゃんも帰りが遅くなってもいいよね」
「まぁ・・・」
「仕事終わったら合格祝いと就職祝いをしよう」
「それ、俺もノッタ!」
亀がニョキッと首を伸ばすみたいに横から甲斐さんが出てきてにこやかに声を上げる。

「甲斐さんも来るんですか!?」
「そんな嫌がる様な態度、俺でもキズつくぞ」
1ミリも傷ついてない様な態度そのままの甲斐さん。

「折角、女性だけで楽しもうと思ってるんだから」
「玲子さんまで俺をのけ者にしないで下さいよ」
「甲斐のおごりならいいかな」
「俺より玲子さんの方が高給取りじゃないですか」
今度は甲斐さんも本当に泣きそうな顔になった。

「しょうがないから3人で親睦を深めよう」
親睦を深める必要はない様に思える関係。

「でも、私そんなに遅くまで付きあえませんよ」
1日目から道明寺より帰りが遅くなったらなに言われるかわかったものではない。
苦虫を噛み殺したような顔で仁王立ちで凄まれるに決まってる。

「大丈夫、問題が起きない様にしっかり送り届けるから」
問題って・・・
飲んで帰りが遅くなるだけで起こる様な問題はないと思うんですが・・・
玲子さんの言葉になぜだか不安になった。

もし道明寺より帰りが遅くなったら・・・
1のことも100くらいで責めてきそうだ。
危なくなる前に「玲子さんと食事してもいい?」と保険を付けとく方が利口かもしれない。
そう連絡を入れるつもりで携帯のボタンをプチっと押した。


午前中はブログサーバーの障害で更新できずに焦りました。
なんとかUP出来てホッと一息ついたところです。


拍手コメント返礼
匿名様
なんども足を運んでいただきありがとうございます。
感謝!
本当につながらなくなると私も焦ります。

 *

「先に行っといて下さい」
甲斐さんの声に送られて事務所を後にする。
仕事の書類作成が終わらないと残業を余儀なくされた甲斐さん。
「甲斐君には悪いけど、女同士の方が安心よね」
玲子さんは意味深な笑顔を浮かべる。
「代表が不機嫌になる要素が一つ消えた」
本気で玲子さんに言われてるから恥ずかしくなる。

2時間前の道明寺への携帯コール。
「一応断りを入れておきます」
デスクの下に体を隠す様にして道明寺への短縮ボタンを押した。

「オッ、どうした?」
聞きなれた声。
穏やかな優しさを含む声に言いやすさを感じてホッとしている。
私が朝一人で先に行ったことへの不満はなさそうだと安心した。

「今日遅くなるんでしょ?」
「情報が早いな」
「西田さんからメールが来たから」
「手回しのいいことだ」
声のトーンが低く下がる気配。
どうも西田さんには不満があるらしい。

「私も少し帰りが遅くなってもいい?」
「なんで?」
「玲子さんが就職祝いしてくれるって言うから」
携帯の向こうが黙り込む。
この沈黙に耐えるのは苦痛だ。
ダメだって返事が返ってきそうで息をのむ。
ダメって言われても行くからね!
反抗してアホらしい言い合いに発展するのは嫌なんだよな。
心がつぶやく。

「俺の帰りが遅くて一人が淋しからとか言わねえのか?」
返ってきた言葉はあまりにも予想外で言葉を失った。
聞き耳を立ててそうな雰囲気の玲子さんと甲斐さん。
言えるかぁぁぁぁぁ。

「言えば許す」
声の主は威圧感丸出しだ。
携帯を包み込む様に両手の手のひらの中に隠した。

「淋しいから・・・」
小さくこもる声

「それだけか?」
「一人じゃ淋しい、愛してる。これくらい言え」
暴君気味に暴走し出してる。

「あのね、今事務所の中で皆がいて一人じゃないんだから」
「だからなんだ」
「俺なら聞こえる様に宣言するぞ」
宣言って・・・
道明寺ならやりそうだ。

「朝も置いていかれた」
「仕事は山積み」
「帰りもここしばらくは遅くなりそうだ」
「西田にお前の周りをウロウロして邪魔するなと釘も刺された」
「俺を邪魔者扱いするのは西田とお前くらいのもんだ」
携帯の向こうでどんどん熱を帯びてくる声。
それくらい言わせなきゃやってられねぇみたいな二アンス。

「一人じゃ淋しい、愛してる」
言われた通りに繰り返す。
革張りの椅子に踏ん反りかえってる道明寺が見えた気がした。

「愛してるってぇ、やっぱ新婚だよね」
デスクの下からゆっくりと出した頭の上から聞こえる玲子さんの声。
視線がぶつかった瞬間に体中が火照り出す。
もうニ度と人がいるとこで道明寺とは連絡をとらないと誓った。

最近なかなか更新が思うように行かなくて申し訳ありません。
ペースが落ちてるというよりも、もうすぐ子供の春休みということで時間が拘束されるので、
作品の書き貯めを行っているのです。
1日数話のUPより毎日新しいお話が読めるようにと考えています。
今までの数話UPのペースに戻るのは春休み明けだと思っていただけたらいいでしょうか。
しばし御辛抱お願いいたします



拍手コメント返礼
mi様
これで司の仕事の能率はあがることでしょう。
もしかしてこれを狙っていたのかな西田さん・・・。

なおピン様
温かいお言葉ありがとうございます。
更新しないと落ち着かなくて(笑)
ほとんど日記みたいな感じになってます。
あっ・・・でも日記は3日坊主でした(^_^;)
 *

暗めに落とされたオレンジの光に包まれた数坪の小さなお店。
カウンター席に数人がけのテーブル。
十数人はいれば満員になりそうだ。
静かに流れるジャズの音楽に心地よく耳を傾けた。

雰囲気としては静かに落ち着ける感じのお店。
迷いもなく玲子さんは中央のカウンター席に座った。
そのまま私も隣に腰を下ろす。

「マスター、新しく入った子だからよろしくね」
「いらっしゃいませ」
白髪交じりの短めに整えられた髪型。
品の良い口髭が印象的なマスターがにこやかに慣れた調子でおしぼりを玲子さんと私に渡す。

「つくしちゃん、ここはお酒も料理も最高よ」
メニューの中から飲み物と食べ物をいくつか玲子さんが注文した。

「褒めても何も出ませんよ」
サーバーからグラスに注ぐ琥珀色のビールがきめ細かな泡を作る。
グラスいっぱいに注がれたビールが目の前にゆっくりと置かれた。

「ビールが出たけど」
「注文したでしょう」
二人の会話に「クスクス」と声が漏れた。

「就職祝いと弁護士の合格祝いだからよろしくね」
「二人だけでですか?」
「甲斐君が後で来るけどね」
軽快なノリの会話。

「それじゃ今日は玲子さんのおごりですか?」
「なら、高いものをじゃんじゃん出すけど」
「就職したばかりだと何かともの入りでしょう」
「このお姉さんなら面倒見がいいから甘えてもいいですよね」
マスターの口髭が口角とともにゆっくりと上に持ちあがる。

「少しのわがままもばっちり聞いてくれるでしょうから」
カウンター越しに私に近づいたマスター顔がにっこりとほほ笑んだ。

「つくしちゃんなら俺よりお金持ってるよな」
「甲斐さんはいつでもピーピー言ってるじゃないですか」
背中越しに聞こえる甲斐さんの声に椅子を回転させて眺める。

「ひどいなマスター、そればらされたら先輩の立つ瀬ないでしょう」
マスターの言葉を簡単に受け流して甲斐さんが私の隣に座る。
私を挟んで3人でビールの入ったグラスを重ねた。

「おめでとう」
「ありがとうございます」
「あっ、甲斐さん、お金を持ってるのは私じゃないですからね」
不服気味に唇を尖らしてカウンターの上に置いた拳がドンと音を鳴らした。

「あっ、悪気はないから」
「悪気があったらなお悪いですよ」
ごめんと目の前に手を合わせる仕草を甲斐さんが作る。

「そうそう、つくしちゃんの金銭感覚は私は好きだな」
「バーゲン好きだもんね」
ポンと玲子さんが私の肩に手を置いて顔を覗き込まれた。
まるでそれは私を慰める様な雰囲気。

何度か一緒に行った買い物。
ワイワイ、キャーキャー言ったノリは優紀やママとのショッピングを思い出させて楽しめた。
「安いって言葉には反応するんですよね」
「財布の中身が数千円だったのにはびっくりしたなぁ」
「必要以外のお金は持たないんです」
「つーか、お金は持ってない苦学生でしたからね」
「財布にお金があると落ち着かなくて・・・」
ことお金のことになると小心者になる。

「今も自分では同じ感覚なんですけど」
「世間はそうは思ってくれないってとこか」
思慮深げな表情で甲斐さんがつぶやいた。

英徳卒業。
それだけでもお金持ちの印象を世間は持つ。
その上道明寺の名前の威力は絶大だ。
婚約発表の時に公開されたラーメン大食いの写真はインパクトが強すぎて、普段の私と結びつかないから、
道明寺つくしと名乗らならなければほとんど他人に気付かれずに済んでる。
道明寺本社以外ではの注意書きが付くことはしょうがないと受け入れている。

なにが幸いするかはわからないものだ。
あのときはなぜあんな写真を公開したのかと道明寺を責めたことは忘れて、感謝しないといけないのかもしれない。

「今の職場の雰囲気好きなんですよね」
「特別扱いじゃなくて、妹みたいに可愛がってもらってるし」
「これからもお願いしますね玲子さん」
姿勢を正して玲子さんを正面に見据えて頭をちょこんと下げた。

「やっぱり、つくしちゃん可愛い」
下げた私の頭の上で髪の毛をクシャクシャンする様に玲子さんの指先が動く。
少しアルコールが回ってきてないか?

「お願いされるの玲子さんだけ?俺は?」
「甲斐は邪魔だって」
私の首に巻きくように腕を動かしてにっこりと玲子さんが笑みを浮かべた。
やっぱり・・・
玲子さん、酔っぱらってるーーーッ。

「俺もつくしちゃん好きなんですから」
冗談ぽく響く甲斐さんの声。

「誰が好きだって」
すぐに天上から降りかかる様な威圧的な声が聞こえてきた。
足元から冷気が流れて室内の温度が数度下がる。
私を好きだと言った甲斐さんは一瞬にして凍らされたように微動だにしない。

「ど・・・みょうじ・・・」
焦る様に首を伸ばして見上げた視線の先で皮肉交じりに口角を上げて冷淡な笑みを浮かべてる道明寺が見えた。


拍手コメント返礼

b-moka様
甲斐さんは大丈夫でしょうが、つくしはどうなるかは保証なし♪
 *

「なんで・・・」
「なんで、ここにいるのよーーーッ」
驚愕気味に上がる声。

「いたら困ることでもあるのか」
皮肉交じりの視線は甲斐さんを睨んだままだ。

困るのは私よりも道明寺の方だと思う。
こんなところに来たら騒ぎになる。
ただでさえ道明寺本社ビルが間近に見える近辺のお店。
後ろのテーブルの客がチラチラと気になる様な視線を投げているのがわかる。

騒がれてるのに慣れてる道明寺。
騒がれても動じない態度をとるのは普通だ。
「うるさい」
「よるなブス」
睨みを効かせて叫んで相手をビビらせる。
道明寺との関係がばれて被害を被るのは私の方だった。
折角連れてきてもらったお店も来るのは今日が最初で最後になりそうだ。

「お店の場所なんて言ってなかったでしょう?」
私も連れてきてもらうまで知らなかった。
道明寺が突然現れるなんて、食事してたら機動隊がいきなり飛び込んで来たくらいのインパクトだ。
私は犯人じゃない!
叫びたい心境。

「GDP」
GDP・・・国内総生産?
GDPの伸び率が気になるのは企業人としては分かるけど、それと私が関係あるのか?
目の前に道明寺が見せる携帯の画面。
小さな地図の真中で☆印がピカピカ点滅。
GPSか・・・。
頭が痛む。

「お前がSPを付けたがらないから、もしもの時の為の用心だ」
全く悪びれてない態度。
自分の言い間違いにも気が付いてないところはさすがだとしかいい様がない。
そのGPSでわざわざ私の居場所を探しだしたってこと?
いまが『もしも』の時だなんて言ったらぶん殴る。

「あのねッ」
拳に固めた指先。
言いかけた言葉を玲子さんの言葉が遮った。
「普通、GPSで監視されるの男の人の方が多いんだけどな」
「心配しなくても、安全に奥さまはお届けしましたのに」
余裕のある笑みが玲子さんの口元に浮かぶ。

「つくしちゃん、ここでおとなしくしてると相手は増長するわよ」
「わがままにならない様にするためには初めの教育が肝心なんだから」
玲子さんが耳元で私だけに聞こえる様に小さく呟く。

「道明寺がわがままなのは今さらどうにもなりませんよ」
道明寺からわがままがなくなったら道明寺じゃなくなる。

強引で横暴で一方的な威圧感を見せられるのも慣れてしまってる。
振り回されるのはいつものことで、筋金入りだ。
それを私にじゃなく周りに発散されるのが困るのだ。


「甲斐さんが言ったのは冗談だから」
諦めた気分で道明寺と向き合う。

「冗談じゃなかったどうするんだ」
「本気だったらこんなところで告白しないわよ」
甲斐さんに威嚇を続ける道明寺の腕を引っ張った。

「甲斐さんすいません、気にしないで下さい」
道明寺が甲斐さんに飛びかかるのを防ぐようにしっかりと両腕を腰に巻きつけた。

「こいつに謝る必要はねえだろう」
「もういいから、帰ろう」
言いたいことは山ほどあるがここで騒ぎを起こすのは得策ではない。

「すいませんそれじゃ」
玲子さん、マスターにも頭を下げてまだ威嚇続行中の道明寺の背中を押す様に店を出た。
それはまるで暴れるサルをなだめて檻に入れる様な気分だ。


入口の前には誰も入ってこない様に警備中のSP数人。
やってきた数人のお客がじろりと睨まれて諦めた様に引き返した。
営業妨害だよ。


「お前、明日も仕事に行くんだよな」
端整な容貌が躊躇することなく目の前に迫る。

「当たり前でしょう」
強気な言葉で遮ろうとしてもギクリと身体がこわばった。

「気が抜けねぇ」
眉毛を少し上げて形の良い唇がわずかにほほ笑む。
笑顔の下に不穏な響きが混じってるのを微妙に感じて顔が強張った。

嫌な予感が・・・。
何やる気だ?
不安のままの私の肩を抱く力強い腕。
その腕が迎えに来た車の後部席へと強引に私を押し込んだ。
 *

「そんなに俺が迎えに来たのが気に食わないのか」
じろり。
気の強い怒りを秘めた瞳が俺を見据える。
俺にそんな不機嫌な顔を向けるのはお前くらいのもんだ。

「だってまだ9時にもなってないじゃない」
「仕事どうしたの。まさか西田さんを振り払って飛び出して来たんじゃないわよね」
責める様な口調。
つくしが気にしてるのは俺の仕事つーか、西田か?
気にくわねぇ。

「早く終わっから迎えに来たとか思わないのか」
つくしに並んで腰をおろして不機嫌なまま腕を組む。

「西田さんが10時くらいまで仕事って言ってたからそんなに早く終わるわけないと普通思うわよ」
「それにGPSって、いい気がするわけないじゃない」
早く仕事が終わって、わざわざ居場所を見つけて迎えに来てやって文句言われるとは思わねーぞ。
居場所見付けたのはわざわざじゃないけど、結構面白がっていた。
すぐにわかるもんだよな。
これからもこの機能は十分に重宝しそうだ。

「別に仕事を途中で放り投げたわけじゃねえよ」
自分の立場を見失うほど馬鹿じゃない。
今回は相手側に俺が気の乗らないふりをする方が効果的だと判断したから早々に切り上げただけの策略。
俺の仕事での手腕は西田も認めてるから俺のやり方に口をはさむことなどない。
「早く終わって良かったですね」と文句を一つも言うことなく俺を送り出してくれたぞ。
俺の仕事ぶりには満足しているはずだ。

「今日はつくしの仕事の邪魔はしてねぇからな」
何となく西田に断ったのは珍しい俺の気遣いてやつだ。

「俺が行かなければどうなってた?」
「どうって?」
不機嫌な顔の真中に疑問符が張り付いた。
これだから気が抜けねぇんだよ。

「お前、甲斐って野郎に告られてたよな」
スキとかなんとか。
それもお前の横に並んで座ってニヤケ気味でな。

「あれ、冗談じゃない、本気のわけないってさっきも言ったでしょう」
「それに甲斐さん彼女いるしね」
「あいつ彼女がいるのにお前に言いよったのか」
「だから違うって」
「どう違うんだよ」
「はぁー」と呆れた様なため息
俺を見てため息つくな。
話しても無駄だみたいな諦めの表情まで顔に浮かんでる。

「仕事・・・」
「んっ?」
「仕事行かせねぇとか言いださないでよね」
「言ったらどうする」
「私の夢を全部叶えてくれるって約束してくれたよね?」
グッ・・・
こいつの夢は弁護士になることで、夢をすべて叶えてやると約束した俺。

「言ってくれたよね」
「うれしかったんだから」
強気な瞳の奥から甘く緩む色が浮かぶ。
反則だ。
強気で強引に責めることなんてできなくなる。
最近つくしの俺の扱いうまくなってねぇか?

「我慢してやるよ」
「我慢て・・・」
「しょうがねぇから我慢してやるって言ってんだ」
呆れた様に大きく見開かれる瞳。
その中でニンマリとほほ笑む俺が映し出される。
仕事はさせてやるよ。
邪魔にならねぇ方法を思いついた。


 *

目覚めのいい朝。
思い切り体を伸ばして開いた瞼。
薄ぼんやりと見えるのは真っ白いシーツ。
さっきまで側に寝ていたはずの住人を探す。

いない?
なんで?
別に私より起きても不思議じゃないんだけど・・・
って!
十分不思議なんだよ道明寺の場合はッ。


昨晩帰ってから寝るってふて寝気味に布団を頭からすっぽりかぶって寝たのは道明寺。
お風呂から出てきたら完全に寝息を立てて寝入ってた。

いつもなら・・・そう!
責任取れとか、隙があるとかから始まってネチネチと責める。
嫉妬丸出しから強制的に押し倒されるパターンなはずなんだけど・・・。
そう思ってもけして期待しているわけでは断じてない。
いつもと違うパターンを見せられると微妙に不安になるだけだ。
たぶん・・・。


朝も私より早く目を覚ますことはまずない。
目が覚めても寝てる私を抱き寄せたり、気を抜くと起きるまでどこ触ってくるかわかんない。
身支度を整えた私がいつまでも起きない道明寺を揺り起こすとベットの中に引っ張り込むのをひそかな楽しみにしてるんじゃないかと疑いたくなるような行動にすぐでる始末。


昨日の流れで行くと絶対今日はそのパターンなんですけど・・・。
「道明寺?」
ベットから抜け出して呼んでも返事ない。
トイレ、浴室、書斎、道明寺が用事のないはずの私の部屋まで歩きまわる。
ついでにテーブルの下まで頭を突っ込んだ。
本当にどこにもいなかった。

テーブルに付いた指先にカサッと紙質の感触。
メモだと気が付いて手に取る。
力強く書かれた見慣れた文字。

「先に行く。お前は勝手にあとから来い」
文字までふてぶてしく見えてしまう。

怒ってる?
私に会いたくない?
そこまで機嫌を損ねるようなことしたか?
私を無視する様な態度はあいつらしくない。

昨日のことを頭の中で時間を巻き戻す。
玲子さんと、甲斐さんと3人での食事。
冗談を言い合ってたいたところに道明寺が現れた。

「俺もつくしちゃん好きなんですから」
甲斐さんのこの言葉に反応して威嚇。
タイミング良すぎだ。
どうして道明寺がここに出没したのか浮かぶ疑惑。
結果はGPSで私の居場所を見つけられただけのことだった。
この時点で不愉快になるのは私の方だ。
が・・・。
「俺が迎えに来てうれしくないのか」
まずはこれが道明寺の言い分。

明日仕事に行くと宣言したら「気が抜けねぇ」って返事された。
思惑ありげな表情。

帰りの車の中でも店の中での攻防を繰り返していた。

「我慢してやるよ」
「我慢て・・・」
「しょうがねぇから我慢してやるって言ってんだ」
にやりと不敵な笑いを浮かべた表情。
あれは怒ってる顔じゃない。
何か企んでる顔だ。
なにするつもりだ?
まさか甲斐さん!?

慌てて出社の準備をして屋敷を出る。
いつもより30分は早い時間。
10階を通り越してエレベーターは最上階まで昇る。

「道明寺!」
息を切らして飛び込んだ執務室。
深々と椅子に腰かけてふんぞり返っている道明寺が不敵な笑みを浮かべてた。


道明寺が何をたくらんでいるか?
興味があるのはその1点ですよね?
残念ながらつくしの心配は皆無でしょうけど。
何企んでるのかな~
 *
目の前で湯気を上げている。
怒りの色の中に見付ける不安げな表情。
まだ本気じゃ怒っちゃいない。

「遅かったな」
「いつもより30分は早いわよ」
俺からは行けねえからつくしから来るように仕向けるのも一つの手だ。
西田!
文句はねえよなとニンマリとなる。

いつもと違うそぶりの一つでも見せればつくしはきっと不安になると読んだ俺の思惑は成功。
だがこの手は連日では使えないのが難点だ。
目の前のつくしの頭の中は自分の同僚に何かするんじゃないかといっぱいになってるはずだ。
そんな姑息な手段を使うほど落ちぶれてはいない。
甲斐が本気でつくしを口説いてたら人間のいないところに飛ばしてたかも。
人がいなけりゃ弁護士なんて必要ないか。

「なにニヤついてるのよ」
頬を膨らましたままドンとデスクの上に両手を突かれた。
椅子に座ったままの俺と同じ高さで視線がぶつかる。

「あいつらになにもする気はないから落ち着け」
「言われなくても冷静です」
「じゃあ、なんでこんなに早く出社してるの?西田さんもまだ出社してないみたいだし・・・」
キョロキョロと部屋をつくしが見渡す。
西田を探すな!
思わず椅子から腰を浮かす。
言いたくなった言葉を飲み込んで座りなおした。

「しばらくお前の仕事場俺の隣な」
「ななななな・・・」
言葉にならない驚きを見せる。

「何言いだすのよーーーーー」
やっと言葉になった。

「岬所長にも話はついているから」
「ついてるって・・・ここでなにを私が仕事するのッ」
「これだ」
ポンと目の前に厚みのある書類を投げる。
企業との契約書。
法律上の不備がないかのチエック。
内容によっては誰にでも見せられるものじゃない。
お前なら問題なく安心っして任せられる。
俺の仕事も理解できる一石二鳥。
棚からボタ餅。
道明寺総帥の妻としての立場上もプラスになる。
これ以上の適人はないと岬所長をくどいてみた。
笑いを浮かべながらも了承してくれた。

「企業関連の法律って得意じゃないんだけど、どっちかって言うと人相手で・・・」

「バン」
デスクの書類がわずかに浮かんで元に戻る。
打ちつける様に置いた手のひらが大きく音を立てた。
「俺の為に何かするのも内助の功ッてやつだろうが」
「内助の功・・・って・・・、良くそんな言葉知ってたね・・・」
言いにくそうに言って「ハハ」っと小さく作る笑い。
「るせ」
対抗するように声を吐き出した。

「だからって、なんで道明寺の横で仕事しなきゃいけないの?」
「事務所に持ってかえってやればいいんじゃない?」
息を吹き返して正論で責める。
その辺はシュミレーション済み。

「重要書類だからここから持ち出し禁止だ」
「それにまだ、お前が個人で仕事できる部屋はもらってないだろう」
俺の考えた姑息な言い訳。
岬所長が今まで自分のオフィス内で確認していたことはこの場合は内緒にしておく。

「無理」
「やったことないし、法律以外の専門用語なんて分からないし・・・」
「誰かに教えてもらわないと・・・」
「やる前からあきらめんのか?」
「お前らしくないじゃん」
「わかんないのは俺が教えてやるよ」
俺が教えてやる。
いい響きだ。

「法律のこと分かるの?」
「わかんないけど契約書は飽きるほど見てるからな」
「じゃあ私は必要ないじゃん」
「弁護士が確認したと言うことが必要なんだよ」
「一日中というわけじゃない。俺がいないときは事務所に戻っていいぞ」
「横暴ッ」
諦めた様につぶやく口元。
無性に楽しい。

「あっ、それからしばらく夜はパートナー同伴で出かけることが続くから」
「同伴って私?」
「お前以外にだれがいるんだ」
一つじゃものたりないから用意していたもう一つの構え。
そろそろ俺の妻だとつくしの顔を世間に知らせるのも必要だと西田に手配させた。
そこは西田も反論しなかった。

「トントン」
ノックの後静かに開く執務室のドア。

「おはようございます。今日はお早い出社で」
ちらっとつくしを横目で見てすぐに俺に移る視線。
深々と目の前で下がる頭。
一気に部屋の空気が静けさを取り戻す。

「ご迷惑をおかけします」
つくしに軽く会釈する西田。

「迷惑なわけねえだろう」
「迷惑です」
間髪いれず俺と西田の間に割り込むつくし。

「代表・・・今日はこれから関西支社に向かう予定です。お帰りは19時を過ぎ予定です」
心得てますとでも言いたげな表情のまま落ち着いた声が部屋に響く。

「聞いてねぇぞ!」
「代表が無理やり夜の予定を変える様におっしゃいましたので昼間の予定も組み替える必要が出てきました」
「しばらくは本社より支社での仕事が優先されます」
昼間の仕事まで予定を変える必要があるのか考えるのは愚問だ。
絶対わざとだろう。

「やった!」
横で飛び上がって叫んだつくしが慌てて口を両手で押さえこんだ。


思うどおりには進まない結果で~。
幸せの一歩手前ですからね。
なかなか司が満足する結果は得られないと言う結論。
最近ドS倶楽部の存在忘れてる様な気がしてます。復活!
次は西田さん日記の登場かな?


拍手コメント返礼
b-moka様
しっかりとドS倶楽部の方々には喜んでもらえたみたいです。
いいのだろうかと不安だった気持ちはなくなりました。
西田さん日記もUPしますね。

たまこ様
この道明寺の行動がたまらないのですが(^_^;)
大丈夫か道明寺財閥!
司に甘えるつくし。
たまには見たいと思いつつこのパターンの方に進んでしまいます。

hokuto☆raou様
坊ちゃんの望みをかなえてやりたい様ないじめたい様な・・・。
最後は甘アマになると言うことで許してこれないでしょうか?司クン。
 *

「何喜んでるんだ」
「いや・・・別に喜んでるわじゃないんだけど・・・」
道明寺の顔色をうかがいながら下からそっと上へと視線を移す。
不機嫌そうに引きつる頬。

「ったく」
吐き捨てる様に言葉を吐いて強引気味に腰に回して来た長い腕が私を引き寄せた。

「なっ、なに」
思わず裏返る声。

「西田さんもまだいるのに!」
近づく顔をそのまま両手で遮る。

「イチャイチャしてれば遠慮して出て行くよ」
「イチャイチャって・・・」
両手も押さえこまれて身動きが取れなくなったまま耳元にかかる息。

「気が付きませんで」
動じてない声の主に思わず首だけ横に向ける。
「二十分だけですから」
表情を変えずに出ていかれた。
さっと血の気が引く気分。
西田さん中途半端な時間作らないでよーーーーーッ。
無情に閉じたドアを非難する様に見つめた。

「たんねぇよな、二十分じゃ」
「五分でいい、いや三分で十分」
ブルと思わず首を左右に振る。
無視するように左右の頬を道明寺の手のひらが包み込む。

「二十四時間」
へっ?
二十四時間って・・・一日!
それは無理だ!
仕事!仕事がある。
それに今から関西に行くんでしょうがぁぁぁぁぁ。

「なに、言ってるの!」
焦る様に声が高音になる。

「お前に触れてない。昨日から二十四時間以上」
そうだったか?
昨日は道明寺を残して出社して、帰りは何とか一緒だったし手ぐらいは握った様な気はするけど・・・。
ふて寝してたのは道明寺の勝手だし、たまにはそんなこともあるだろう。
って・・・
理屈が通じる相手じゃなかった。

「一緒に寝てたじゃん」
これが意味あるわけないのは分かってるのに言ってしまうのはなぜなんだろう。
ギリギリの虚しい抵抗だ。
欲望のままに熱く見つめる瞳とぶつかった。


拒否する間もなく重なる唇。
官能的に急速に駆り立てる様なキス。
それは道明寺の情熱のままに躊躇することなく私に注がれてくる。
それを抗うだけの経験は私にはない。

「続きは夜な」
名残惜しそうに離れた唇。
気持ちだけ取り残された様に戸惑う。
目の前のあいつは満足そうなほほ笑みを見せる。
私は現実に戻れないまま返事もできずにボーッとしてしまってた。


「お前がうんざりするくらい側にいてやるから覚悟しとけ」
コツコツと遠ざかる靴音。
振り向きざまに響く道明寺の声。
上昇気味に機嫌のいい響き。
部屋に私を残したままパタンとドアが閉まる。

ゆるゆると床に座り込む。
「はぁー」
「つかれた・・・。」
身体から空気が抜ける様に小さく声が漏れる。

二十分経ってない。
腕時計の針は数分の経過しか示していない様な状態。

キスだけでこれって・・・。
耐えられるのだろうか・・・。
心によぎる一抹の不安。
お手柔らかにお願いしたい。
通じるかな道明寺に。
「はぁー」
また溜息が洩れた。


久々にちょっと甘い感じで~。
この差がどう出るのか?
西田の思い通りにはさせないぞ!という坊ちゃんの意思を読み取ってもらえればと考えてUPしてみました。
それでもやっぱりドS倶楽部は健在ですから~。


拍手コメント返礼
hokuto☆raou様
周りを気にする様な道明寺じゃないでしょけどつくししかか見えてないから大変でしょうね。
西田さん目線も頑張ってみました。